この記事でわかること
- 標準報酬月額の「等級跳び」が起きる仕組み
- 月収がわずかに増えただけで手取りが減る具体的なケース
- 等級跳びを防ぐための実践的な対策
「昇給したのに先月より手取りが少ない」の正体
「ベースアップで月収が5,000円増えたはずなのに、振込額が前月より少なかった」——こんな経験をした人は少なくありません。これは「標準報酬月額の等級跳び」が原因です。社会保険料は毎月の実際の給与ではなく「標準報酬月額」という区分ごとの等級をもとに計算されます。給与が等級の境界値を超えると、保険料が一段階上がります。その増加幅が昇給額を超えると「手取りが減る逆転現象」が起きます。
標準報酬月額の等級の仕組み
標準報酬月額は全50等級(最低58,000円〜最高1,390,000円)に区分されています。月収が一定の境界値を超えると1つ上の等級に入り、社会保険料が段階的に増えます。
| 月収の目安 | 等級 | 標準報酬月額 | 月社会保険料(本人分・東京・40歳未満) |
|---|---|---|---|
| 〜27.5万円未満 | 17等級 | 260,000円 | 約36,764円 |
| 27.5〜29万円未満 | 18等級 | 280,000円 | 約39,592円 |
| 29〜31万円未満 | 19等級 | 300,000円 | 約42,420円 |
| 31〜33万円未満 | 20等級 | 320,000円 | 約45,248円 |
| 33〜35万円未満 | 21等級 | 340,000円 | 約48,076円 |
※上記はあくまで目安・参考値です。実際の保険料は加入する保険者や料率によって異なります。
等級跳びで手取りが減る具体例
月収が28.9万円から29.1万円に2,000円昇給したケース(東京都・40歳未満):
- 昇給前:18等級・標準報酬月額28万円・月社保料 約39,592円
- 昇給後:19等級・標準報酬月額30万円・月社保料 約42,420円
- 保険料増加:月+2,828円
- 給与増加:月+2,000円
- 差引:月-828円(手取りが減る)
わずか2,000円の昇給が等級の境界をまたぐことで、かえって手取りが減るというのが「等級跳びの逆転現象」です。年換算では約1万円の損失になります。
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等級が変わるのはどのタイミング?
標準報酬月額の等級が変わる主なタイミングは2つです。
- 定時決定(毎年9月改定):4〜6月の報酬平均をもとに等級が再決定される。残業代・通勤手当・テレワーク手当も含む
- 随時改定(月額変更届):昇給や降給で固定的な給与が2等級以上変動し3か月継続した場合に届出
つまり毎月の保険料が変わるわけではなく、特定のタイミングで等級がリセットされる仕組みです。4〜6月の報酬が高いと「定時決定」で等級が上がり、9月から翌年8月まで高い保険料が続きます。
等級跳びを防ぐための対策
- 4〜6月の残業を意識的に減らす:この期間の報酬が低いと定時決定での等級上昇を抑えられる。筆者自身も毎年実践している
- 4〜6月の手当の変更を避ける:通勤手当の変更など、報酬が増えるタイミングを7月以降にずらせると理想的
- 現在の等級と境界値を把握する:自分の月収が等級の境界値に近い場合、少しの変化で等級が上がることを知っておく
4〜6月の残業削減は合法的に保険料増加を抑える有効な方法です。ただしやり過ぎると業務に支障が出るため、仕事の状況と天秤にかけて判断してください。
昇給は「損」ではない
等級跳びで一時的に手取りが減っても、払った厚生年金保険料は将来の年金受給額に直結します。給与が上がれば数年後には保険料増加分を超える収入増が得られます。「等級跳びが怖いから昇給を拒否したい」という発想は本末転倒です。正しいアプローチは「昇給は受け入れつつ、4〜6月の残業だけコントロールして定時決定での等級上昇を抑える」ことです。
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まとめ
- 標準報酬月額の等級が境界値を超えると保険料が段階的に増える
- 昇給額が小さく等級境界をまたぐと、増加した保険料が昇給分を上回り手取りが減ることがある
- 4〜6月の残業を抑えると定時決定での等級上昇を防げる可能性がある
- 長期的には昇給プラス年金増のメリットが大きいため、昇給そのものは前向きに受け入れること
本記事は情報提供を目的としており、税務・法律上のアドバイスではありません。正確な保険料は加入先の保険者または会社の担当部署にご確認ください。

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