この記事でわかること
- 昇給で手取りが減る「等級逆転現象」が起きる仕組み
- 逆転が起きる具体的な月収の境界線と保険料の変化額
- 知っておきたい対策と考え方
昇給したのに手取りが減ることがある
給与が上がったのに手取りが減った、という経験はありませんか?これは社会保険料の「標準報酬月額」という仕組みに由来する現象です。2025年度現在の情報をもとに執筆しています。
社会保険料は実際の月収ではなく、「標準報酬月額」という等級ごとに決められた金額を基準に計算されます。等級の境界線を少しでも超えると保険料が一気に増えるため、給与の増加分を上回る保険料増加が起きることがあります。
標準報酬月額の等級の仕組み
厚生年金には32等級、健康保険には50等級(協会けんぽ)の標準報酬月額が設けられています。月収が「○円以上△円未満」の範囲に入ると、対応する等級の標準報酬月額で保険料が決まります。
重要なのは、等級の境界線をまたいで月収が増えると、標準報酬月額が1等級分まるごと上がるという点です。たとえば月収が269,000円から270,000円に上がるだけで、標準報酬月額が260,000円から280,000円に跳び上がります。
逆転現象の具体例
実際に逆転が起きるケースを試算してみましょう。東京都・協会けんぽ加入(40歳未満)での比較です。
| 月収の変化 | 標準報酬月額の変化 | 保険料の変化(月) | 手取りへの影響 |
|---|---|---|---|
| 269,000円 → 270,000円(+1,000円) | 260,000円(17等級) → 280,000円(18等級) | 36,764円 → 39,592円(+2,828円) | 約−1,828円 |
| 349,000円 → 350,000円(+1,000円) | 340,000円(21等級) → 360,000円(22等級) | 48,076円 → 50,904円(+2,828円) | 約−1,828円 |
※上記はあくまで目安・参考値です。実際の保険料は加入する保険者や料率によって異なります。
月収1,000円アップにより手取りが約1,828円減るという逆転が起きています。「昇給したのにがっかりした」という方がいても不思議ではありません。
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逆転現象が続く期間
社会保険料の等級は、毎年4〜6月の給与をもとに判定される「定時決定」で年1回更新されます。等級が上がった場合、その等級は翌年の改定まで続くため、1年近く手取りが少ない状態が続くこともあります。
また、昇給だけでなく残業代の増加でも同じ現象が起きます。特に4〜6月に残業が多い場合、翌年の等級が上がるリスクがあります。
逆転現象が起きやすい月収の境界線
以下の月収あたりで等級が変わり、逆転が起きやすくなります。自分の月収がこれらに近い場合は特に注意が必要です。
- 月収270,000円付近(17等級→18等級)
- 月収290,000円付近(18等級→19等級)
- 月収330,000円付近(20等級→21等級)
- 月収350,000円付近(21等級→22等級)
- 月収370,000円付近(22等級→23等級)
対策と考え方
昇給額を境界線より大きくする
境界線をわずかに超える昇給ではなく、境界線を大きく超える昇給(例:1,000円ではなく20,000円以上)にすることで、保険料増加分を給与増加が吸収しやすくなります。昇給交渉の際にこの仕組みを知っておくと交渉材料になります。
長期的には損ではない
社会保険料の増加は将来の厚生年金や健康保険の給付に反映されます。短期的な手取り減少は、長期的には年金増加や充実した保障として戻ってくる部分でもあります。
自分の現在の等級や保険料を把握するには、社保ジャッジのツール(https://tool.shaho-judge.com)が役立ちます。等級の境界線も含めて確認できますので、昇給交渉前にぜひご活用ください。
まとめ
- 月収が等級の境界線をわずかに超えると、保険料増加が給与増加を上回り手取りが減ることがある
- 月収1,000円アップでも保険料が約2,828円増え、手取りが約1,828円減るケースがある(目安)
- 効果は翌年の定時決定まで約1年続くため、昇給交渉前に等級の境界線を把握しておくことが重要
昇給の喜びが手取り減少で薄れないよう、社会保険料の仕組みを理解したうえで給与交渉や家計設計を行いましょう。
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本記事は情報提供を目的としており、税務・法律上のアドバイスではありません。正確な保険料は加入先の保険者または会社の担当部署にご確認ください。

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