2025年度現在の情報をもとに執筆しています。
この記事でわかること
- なぜ健康保険料率が都道府県ごとに異なるのか、その仕組みと理由
- 2025年度の最高・最低料率と主要都市の一覧データ
- 地域差が自分の手取りや会社の人件費にどう影響するか、具体的な計算例
「同じ給料なのに、勤務先が違うだけで手取りが変わる?」と聞いたら、驚く方も多いかもしれません。実は健康保険料率は都道府県によって異なり、最大で年間数万円もの差が生じることがあります。この記事では、その仕組みをわかりやすく解説します。
協会けんぽの都道府県別料率制度とは
このセクションでは、地域ごとに料率が異なる制度がいつ・なぜ始まったのかを説明します。
全国健康保険協会(協会けんぽ)は、2009年(平成21年)度から都道府県単位で保険料率を設定する仕組みを導入しました。それ以前は全国一律の料率でしたが、地域によって医療費水準や年齢構成が大きく異なることから、より公平な負担を実現するために改定されたのです。
毎年3月分(4月納付分)から料率が改定され、各都道府県支部の以下の要素を反映して決定されます。
- ① 医療費の実績(1人当たりの医療費)
- ② 年齢構成の差異(65〜74歳の前期高齢者の割合など)
- ③ 所得水準の差異
なお、大企業などが設立する「組合健保」や公務員の「共済組合」は独自の料率を設定できるため、この都道府県別料率制度の対象外です。協会けんぽに加入している主に中小企業の従業員が、この地域差の影響を受けます。
なぜ西日本・九州は料率が高い傾向があるのか
料率差の最大の要因は「1人当たりの医療費」の違いです。高齢化率・生活習慣病の罹患率・医療機関へのアクセスのしやすさ・病床数などが地域の医療費に影響します。一般的に西日本・九州地方は医療費が高く、東日本・甲信越は低い傾向があります。
2025年度の最高料率は佐賀県の10.75%で、医療費水準が全国トップクラスであることが背景にあります。一方、最低は新潟県の9.35%で、医療費が低水準で健康寿命も長いことで知られています。この差は実に1.40ポイント。数字だけ見るとわずかに思えますが、手取りへの影響は意外と大きいんですよね。
2025年度 都道府県別の健康保険料率一覧
このセクションでは、厚生労働省・協会けんぽ公表の2025年度確定値をもとに、全都道府県の料率をまとめます。
| 地域・都道府県 | 労使合計料率 | 本人負担(1/2) |
|---|---|---|
| 佐賀県(最高) | 10.75% | 5.375% |
| 福岡県 | 10.36% | 5.180% |
| 大阪府 | 10.29% | 5.145% |
| 香川県・熊本県 | 10.24% | 5.120% |
| 兵庫県 | 10.16% | 5.080% |
| 京都府 | 10.11% | 5.055% |
| 高知県 | 10.07% | 5.035% |
| 鹿児島県 | 10.05% | 5.025% |
| 宮城県・山口県 | 10.04% | 5.020% |
| 岡山県 | 10.03% | 5.015% |
| 北海道・長崎県・大分県 | 10.21% | 5.105% |
| 秋田県 | 10.02% | 5.010% |
| 東京都・神奈川県・愛媛県 | 9.98% | 4.990% |
| 青森県 | 9.96% | 4.980% |
| 島根県 | 9.93% | 4.965% |
| 愛知県 | 9.90% | 4.950% |
| 奈良県・和歌山県・宮崎県 | 9.87% | 4.935% |
| 福井県 | 9.88% | 4.940% |
| 滋賀県 | 9.85% | 4.920% |
| 石川県・栃木県・福島県 | 9.84% | 4.920% |
| 岩手県 | 9.82% | 4.910% |
| 鳥取県 | 9.80% | 4.900% |
| 埼玉県 | 9.78% | 4.890% |
| 群馬県 | 9.76% | 4.880% |
| 千葉県 | 9.75% | 4.875% |
| 静岡県 | 9.72% | 4.860% |
| 茨城県 | 9.74% | 4.870% |
| 山梨県 | 9.67% | 4.835% |
| 富山県 | 9.57% | 4.785% |
| 沖縄県 | 9.43% | 4.715% |
| 長野県 | 9.49% | 4.745% |
| 新潟県(最低) | 9.35% | 4.675% |
※出典:全国健康保険協会(協会けんぽ)2025年度確定値。健康保険料は労使折半のため、従業員の自己負担は労使合計料率の1/2となります。
地域差が手取りに与える影響:具体的な計算例
このセクションでは、月収25万円・35万円・50万円の3パターンで、都道府県の違いによる手取り差を試算します。
社保ジャッジで実際に試算してみると、地域差の影響は月収が上がるほど大きくなることがわかります。特に高収入の方や、転勤の多い方には見逃せないポイントです。
月収25万円の場合(標準報酬月額26万円・第17等級)
| 保険の種類 | 東京都 | 佐賀県 | 新潟県 |
|---|---|---|---|
| 厚生年金(本人負担) | 23,790円 | 23,790円 | 23,790円 |
| 健康保険(本人負担) | 12,974円 | 13,975円 | 12,155円 |
| 社会保険料合計(40歳未満) | 36,764円/月 | 37,765円/月 | 35,945円/月 |
| 介護保険(40〜64歳・本人負担) | 2,080円 | 2,080円 | 2,080円 |
| 合計(40〜64歳) | 38,844円/月 | 39,845円/月 | 38,025円/月 |
※介護保険料は2025年度協会けんぽ料率1.60%(本人負担0.80%)。260,000円×0.80%=2,080円。厚生年金は全国一律のため都道府県による差はありません。
月収35万円の場合(標準報酬月額36万円・第22等級)
| 保険の種類 | 東京都 | 佐賀県 | 新潟県 |
|---|---|---|---|
| 厚生年金(本人負担) | 32,940円 | 32,940円 | 32,940円 |
| 健康保険(本人負担) | 17,964円 | 19,350円 | 16,830円 |
| 社会保険料合計(40歳未満) | 50,904円/月 | 52,290円/月 | 49,770円/月 |
| 介護保険(40〜64歳・本人負担) | 2,880円 | 2,880円 | 2,880円 |
| 合計(40〜64歳) | 53,784円/月 | 55,170円/月 | 52,650円/月 |
| 年間合計(40〜64歳) | 645,408円 | 662,040円 | 631,800円 |
※介護保険料:360,000円×0.80%=2,880円。東京都と佐賀県の健康保険料差は月1,386円・年間16,632円、東京都と新潟県の差は月1,134円・年間13,608円となります。
月収50万円の場合(標準報酬月額50万円・第27等級)
| 保険の種類 | 東京都 | 佐賀県 | 新潟県 |
|---|---|---|---|
| 厚生年金(本人負担) | 45,750円 | 45,750円 | 45,750円 |
| 健康保険(本人負担) | 24,950円 | 26,875円 | 23,375円 |
| 社会保険料合計(40歳未満) | 70,700円/月 | 72,625円/月 | 69,125円/月 |
| 介護保険(40〜64歳・本人負担) | 4,000円 | 4,000円 | 4,000円 |
| 合計(40〜64歳) | 74,700円/月 | 76,625円/月 | 73,125円/月 |
※介護保険料:500,000円×0.80%=4,000円。佐賀県と新潟県の健康保険料(本人負担)の差は月3,500円・年間42,000円。企業負担も同額発生するため、1人当たり年間84,000円の地域コスト差が生じます。
※上記はあくまで目安・参考値です。実際の保険料は加入する保険者や料率によって異なります。
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実務で知っておきたい「料率適用のルール」
このセクションでは、転勤・転居時の注意点や、料率が変わるタイミングなど実務的なポイントを解説します。
健康保険料率は「従業員の自宅の住所」ではなく、「事業所の所在地(勤務先)」の都道府県が適用されます。これは意外と見落とされがちなポイントです。たとえば神奈川県在住でも、東京都内の事業所に勤務していれば東京都の料率(9.98%)が適用されます。
転勤で勤務先が変わる場合は、料率も自動的に変わります。月収35万円(標準報酬月額36万円)の方が東京から佐賀へ転勤した場合、健康保険の本人負担は月17,964円から19,350円へと月額1,386円・年間16,632円の負担増になります。逆に東京から新潟への転勤なら、年間13,608円の負担減です。
「前期高齢者調整」で格差は緩和されている
都道府県間の料率差を完全に放置しているわけではなく、65〜74歳の「前期高齢者」の加入比率の差を調整する仕組みも設けられています。高齢者比率の高い支部は交付金を受け取り、低い支部は納付金を拠出することで、純粋な医療費格差のみが料率に反映される設計になっています。
また、75歳以上の後期高齢者は後期高齢者医療制度に移行するため、協会けんぽは別途「後期高齢者支援金」を拠出しています。こうした複数の調整を経てもなお、最大1.40ポイントの差が残っているというのが現状です。
4〜6月の残業には要注意:等級の崖
社会保険料の等級は、4〜6月の給与(算定基礎届の対象月)の平均をもとに決まります。この期間に残業代が増えて標準報酬月額の等級が一つ上がると、健康保険・厚生年金の両方が上がるため、手取り増加分が保険料増加分で一部相殺されることがあります。
たとえば月収が34万9,999円から35万円をわずかに超えると、標準報酬月額が34万円(第21等級)から36万円(第22等級)に切り上がり、厚生年金だけで月1,830円・年間21,960円の負担増になります。残業代や交通費・通勤手当も報酬月額に含まれるので、4〜6月の勤務時間には特に意識してみるといいかもしれません。
組合健保との比較:協会けんぽは高い?
このセクションでは、大企業の組合健保と協会けんぽの料率を比較し、転職・就職時の視点も提供します。
大企業などが設立する健康保険組合(組合健保)は、独自の料率設定が可能で、概ね3〜13%の範囲で設定されています。財政が健全な組合では、協会けんぽの都道府県料率を下回るケースも多く見られます。
転職を検討する際、給与の額面だけでなく「どの健康保険に加入するか」を確認することで、実質的な手取り額がより正確に把握できます。中小企業(協会けんぽ)から大企業(組合健保)への転職では、健康保険料が下がるケースもあるんですよね。こうした視点を持っておくと、賢い就活・転活につながります。
まとめ:地域差を知れば、社会保険料が「見える化」できる
この記事の要点を3つに絞って振り返ります。
- ① 協会けんぽの健康保険料率は都道府県ごとに異なり、2025年度は最高・佐賀県10.75%〜最低・新潟県9.35%と最大1.40ポイントの差がある
- ② 料率は従業員の自宅ではなく「事業所の所在地」が基準。転勤・転居で料率が変わり、年間数万円単位の手取り差が生じることがある
- ③ 4〜6月の残業が等級を押し上げると、健康保険・厚生年金の両方が増加する「等級の崖」にも注意が必要
自分の社会保険料が適正かどうか、地域差の影響をどのくらい受けているか——そんな疑問をすぐに確認できるのが「社保ジャッジ」ツールです。標準報酬月額の等級や都道府県を選ぶだけで、素早く試算できます。ぜひ一度試してみてください。
保険料の地域差を踏まえて、より精緻な手取り試算や節税シミュレーションを検討したい方には、こんな選択肢もあります。
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本記事は情報提供を目的としており、税務・法律上のアドバイスではありません。正確な保険料は加入先の保険者または会社の担当部署にご確認ください。2025年度現在の情報をもとに執筆しています。

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