この記事でわかること
- 企業型DC(企業型確定拠出年金)がもたらす「三重の節税効果」の仕組み
- iDeCoとの最大の違い=社会保険料への影響がある・ない
- 月収別・具体的な節税シミュレーションで手取りへの影響を確認
「企業型DCって、なんとなく会社が年金を積み立ててくれる制度でしょ?」そう思っている方は多いのではないでしょうか。実は、企業型DCはただの年金制度ではなく、所得税・住民税の節税+社会保険料の節減+運用益非課税という「三重の節税効果」を持つ、非常に優れた制度なんです。
2025年度現在の情報をもとに、iDeCoとの違いも含めてわかりやすく解説します。
企業型DCの節税効果|三重のメリットを整理しよう
このセクションでは、企業型DCが「どのルートで節税につながるのか」を3つの視点から整理します。
① 所得税・住民税が減る(非課税拠出)
企業型DCの掛金は、企業が「給与とは別に」拠出します。従業員にとっては給与として受け取っていないお金なので、所得税・住民税の課税対象になりません。月27,500円の掛金を積み立てていても、その分は「もらっていないもの」として扱われるわけです。
たとえば所得税率20%・住民税10%の方なら、月27,500円の掛金で月8,250円・年間約99,000円の節税効果が期待できます(目安)。これは家計にとってかなりインパクトのある数字ですよね。
② 社会保険料も下がる可能性がある(iDeCoにはない効果)
ここが企業型DCとiDeCoの最大の違いです。企業型DCの掛金は報酬月額に算入されないため、標準報酬月額が下がる可能性があります。標準報酬月額が低くなれば、健康保険料や厚生年金保険料も少なくなります。
一方、iDeCoは給与を受け取った後に自分で掛金を拠出する仕組みなので、標準報酬月額には一切影響しません。つまりiDeCoには社会保険料の節減効果はゼロです。この違いは、等級の境界線付近では年間数万円規模の手取り差になることもあります。
③ 運用益が非課税(長期になるほど差が広がる)
通常の投資では、利益に対して約20.315%の税金がかかります。でも企業型DC内で得た運用益(利息・分配金・売却益)は全額非課税です。たとえば月55,000円(他制度なし・上限)を30年間・年利3%で運用すると、試算では3,200万円超になる可能性があります。課税口座との差は数百万円規模になることも(あくまで目安・参考値です)。
iDeCoとの違いを徹底比較
このセクションでは、企業型DCとiDeCoの違いを一覧表でスッキリ確認します。
| 比較項目 | 企業型DC | iDeCo |
|---|---|---|
| 掛金を拠出するのは誰? | 企業(+マッチング拠出で従業員も可) | 従業員本人 |
| 所得税・住民税の節税 | あり(課税対象外) | あり(小規模企業共済等掛金控除) |
| 社会保険料の節減効果 | あり(等級低下の可能性) | なし |
| 運用益非課税 | あり | あり |
| 2025年度の掛金上限(他制度なし) | 月55,000円 | 月20,000円(企業型DC加入者) |
| 2025年度の掛金上限(DB等あり) | 月27,500円 | 月12,000円(企業型DC+DB加入者) |
| 受取時の税制優遇 | 退職所得控除 or 公的年金等控除 | 退職所得控除 or 公的年金等控除 |
※上記はあくまで目安・参考値です。実際の保険料は加入する保険者や料率によって異なります。
2022年10月の法改正により、企業型DC加入者がiDeCoにも加入しやすくなりました(規約変更不要)。また、マッチング拠出(従業員が企業掛金に上乗せする仕組み)とiDeCoは選択制となっています。マッチング拠出の上乗せ分は「小規模企業共済等掛金控除」として所得控除になりますが、社会保険料の節減効果はありません。
月収別・節税シミュレーション
このセクションでは、月収25万円・35万円・50万円の3パターンで、企業型DCの節税・節保険料効果を具体的に試算します。
月収25万円の場合(東京都・39歳以下)
| 項目 | 企業型DC掛金なし | 企業型DC掛金27,500円/月 |
|---|---|---|
| 標準報酬月額 | 260,000円(第17等級) | 220,000円(第15等級・等級低下時) |
| 厚生年金保険料(本人負担) | 23,790円 | 20,130円 |
| 健康保険料(本人負担・東京) | 12,974円 | 10,978円 |
| 社会保険料合計 | 36,764円 | 31,108円 |
| 社会保険料の節減額 | ▲5,656円/月(年間▲約67,872円) | |
※上記はあくまで目安・参考値です。等級の変動は標準報酬月額の区切りに依存するため、個別試算が必要です。
月収25万円のケースでは、等級が2段階下がるため社会保険料の節減効果が大きく出ました。所得税・住民税の節税(税率にもよりますが月数千円〜)と合わせると、合計で月1万円近い手取り改善になる可能性があります。
月収35万円の場合(東京都・39歳以下)
| 項目 | 企業型DC掛金なし | 企業型DC掛金27,500円/月 |
|---|---|---|
| 標準報酬月額 | 360,000円(第22等級) | 340,000円(第21等級・等級低下時) |
| 社会保険料節減(等級低下あり) | ▲約2,828円/月(年間▲約33,936円) | |
| 所得税・住民税節税(税率30%) | ▲8,250円/月(年間▲99,000円) | |
| iDeCo月12,000円との所得控除差 | DC節税は年間99,000円 vs iDeCo年間43,200円(税率30%) | |
※上記はあくまで目安・参考値です。実際の保険料は加入する保険者や料率によって異なります。
月収35万円のケースでは、等級境界線をまたがないケースもあります。等級をまたいだとしても社会保険料の節減は月約2,828円程度。一方、所得税・住民税の節税効果は掛金額が大きいほど効いてきます。iDeCoの月12,000円と比べて掛金が2.3倍ある分、節税額も大きくなります。
月収50万円の場合(東京都・45歳・介護保険該当)
| 項目 | 企業型DC掛金なし | 企業型DC掛金27,500円/月 |
|---|---|---|
| 標準報酬月額 | 500,000円(第27等級) | 470,000円(第26等級) |
| 厚生年金保険料(本人負担) | 45,750円 | 43,005円 |
| 健康保険料(本人負担・東京) | 24,950円 | 23,453円 |
| 介護保険料(本人負担) | 4,000円 | 3,760円 |
| 社会保険料合計 | 74,700円 | 70,218円 |
| 社会保険料節減 | ▲4,482円/月(年間▲約53,784円) | |
| 所得税節減(税率33%+住民税10%) | ▲約11,825円/月 | |
| 月合計の節税・節保険料効果 | 約16,000円超/月(目安) | |
※上記はあくまで目安・参考値です。実際の保険料・税額は加入する保険者や所得税率によって異なります。
月収50万円・45歳のケースでは、社会保険料の節減と所得税・住民税の節税を合わせると、月16,000円超・年間約19万円以上の実質的な手取り改善が期待できます。これは年収に換算すると3〜4%近い効果になる計算です。
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知っておきたい注意点とデメリット
このセクションでは、企業型DCのメリットだけでなく、見落としがちな注意点を整理します。
社会保険料が下がる=将来の年金も下がる
標準報酬月額が低下すると、社会保険料の負担が減る反面、将来受け取る厚生年金額も少なくなります。標準報酬月額が1等級(約2万円)低下すると、厚生年金は加入1年あたり月約360円程度の低下になる計算です(目安)。現役時代の節減メリットと老後の受給減少のトレードオフは、ライフプランに合わせてしっかり考えておきましょう。
等級をまたがないと社会保険料節減はゼロ
社会保険料の節減効果は、標準報酬月額の等級が実際に下がるかどうかにかかっています。等級の境界線をまたがない場合は、節減効果はゼロです。たとえば月収35万円(第22等級・標準報酬360,000円)でDC掛金27,500円を拠出しても、報酬月額相当が322,500円→等級の境界線次第では第21等級に下がらないケースもあります。ご自身の報酬月額が等級のどのあたりにあるか、事前に確認することをおすすめします。
なお、等級の変動は固定的賃金の変動から4ヶ月目の随時改定ルールが適用されるため、タイミングにも注意が必要です。
受取時には課税される(ただし大きな控除あり)
企業型DCは積立・運用時には非課税ですが、受取時には課税対象になります。ただし、一時金受取なら「退職所得控除」(勤続20年超で1年あたり70万円)、年金形式なら「公的年金等控除」が使えるため、長期加入ほど受取時の税負担は非常に小さくなります。30年加入なら退職所得控除だけで1,500万円超の控除が可能です。
まとめ|企業型DCはiDeCoと組み合わせて最大活用
この記事の要点を3つに絞ってお伝えします。
- 企業型DCは「所得税節税+社会保険料節減+運用益非課税」の三重の節税効果を持ち、iDeCoにはない社会保険料の節減効果が最大の強みです。
- iDeCoは所得控除による節税効果があるが、社会保険料には影響しない。掛金上限も企業型DCより小さいため、節税総額では企業型DCが有利なケースが多いです。
- 等級境界線の確認が重要。社会保険料節減効果は等級が下がるかどうかに依存します。自分の報酬月額がどの等級にあるかを先に確認しましょう。
「自分の場合、実際にどれくらい節税・節保険料になるの?」と気になった方は、ぜひ社保ジャッジの無料試算ツールで自分の数字を確認してみてください。月収・年齢・都道府県を入力するだけで、社会保険料の目安をかんたんに試算できますよ。
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※本記事は情報提供を目的としており、税務・法律上のアドバイスではありません。正確な保険料・税額は加入先の保険者または会社の担当部署、税理士等の専門家にご確認ください。2025年度現在の情報をもとに執筆しています。出典:厚生労働省「2025年度厚生年金・健康保険の標準報酬月額表」「企業型確定拠出年金の掛金限度額について」

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