定時決定(算定基礎届)とは?4〜6月給与の影響

2025年度現在の情報をもとに執筆しています。

この記事でわかること

  • 定時決定(算定基礎届)の仕組みと対象者
  • 4〜6月の給与がなぜ1年間の社会保険料を左右するのか
  • 等級の境界線をまたぐと年間でどれだけ負担が変わるか

定時決定(算定基礎届)とは何か?

このセクションでは、定時決定の基本的な仕組みと手続きの流れを整理します。

毎年7月になると、会社の給与担当者が慌ただしくなる理由のひとつが「算定基礎届」の提出です。正式には「定時決定」と呼ばれるこの手続き、実は会社員の社会保険料を毎年見直すための大切な制度なんです。

定時決定とは、毎年7月1日時点で在籍する厚生年金・健康保険の被保険者全員を対象に、4月・5月・6月の3か月間の報酬をもとに標準報酬月額を見直す手続きです。事業主は毎年7月10日(土日祝の場合は翌営業日)までに、所轄の年金事務所または健康保険組合へ算定基礎届を提出する義務があります。

2025年度のスケジュールは以下のとおりです。一定規模以上の法人については、電子申請が義務付けられている点もおさえておきましょう。

イベント 時期
算定基礎届 提出期限 2025年7月10日(木)
新標準報酬月額 適用開始 2025年9月分保険料(10月納付分)より
適用終了 2026年8月分保険料まで

対象者と除外ケース

定時決定の対象になるのは、7月1日時点で在籍するすべての被保険者です。ただし、以下のケースは原則として除外されます。

  • 6月1日以降に新たに被保険者となった方(新規取得者)
  • 7月に随時改定(月額変更届)が予定されている方

「自分は対象になるのかな?」と迷ったときは、会社の人事・総務担当者に確認するのが確実です。

算定方法:どうやって標準報酬月額が決まるの?

このセクションでは、4〜6月の報酬がどのように標準報酬月額へ変換されるかを解説します。

算定の基本ルールはシンプルです。4月・5月・6月の3か月間に実際に支払われた報酬の平均額を計算し、その金額を等級表に当てはめるだけ。ここでいう「報酬」には基本給だけでなく、各種手当・通勤手当・残業代なども含まれます。

支払基礎日数17日ルールとは?

ひとつ重要なルールがあります。それが「支払基礎日数17日以上」の縛りです。月の支払基礎日数(出勤日数など)が17日未満の月は、計算対象から除外されます。

もし4・5・6月の3か月すべてが17日未満だった場合は、前年度の標準報酬月額がそのまま継続されます。ただし「3か月のうち1か月でも17日以上あれば算定対象になる」ため、病欠が多かった月があっても油断は禁物です。厚生労働省の通達でも、この日数カウントについては実務上の注意事項として明示されています。

4〜6月の給与が1年分の保険料を決める

このセクションでは、なぜ4〜6月の3か月間がそれほど重要なのかを、具体的な試算とともに説明します。

定時決定で決まった標準報酬月額は、9月分保険料(10月納付分)から翌年8月分保険料まで、まるまる12か月間適用されます。つまり、たった3か月の給与水準が1年間の社会保険料をほぼ丸ごと左右するわけです。これを知っているか知らないかで、給与設計への意識がずいぶん変わってきますよね。

月収別・社会保険料シミュレーション(東京都・協会けんぽ)

社保ジャッジで実際に試算した結果をもとに、代表的な月収別の保険料をまとめました。2025年度の保険料率は、厚生年金18.30%(本人負担9.15%)、健康保険(東京都)9.98%(本人負担4.99%)、介護保険(40〜64歳)1.60%(本人負担0.80%)を使用しています。

月収 標準報酬月額(等級) 厚生年金(本人) 健康保険(本人) 合計(40歳未満) 合計(40〜64歳)※介護保険含む
25万円 260,000円(第17等級) 23,790円 12,974円 36,764円 38,844円
(介護2,080円加算)
35万円 360,000円(第22等級) 32,940円 17,964円 50,904円 53,784円
(介護2,880円加算)
50万円 500,000円(第27等級) 45,750円 24,950円 70,700円 74,700円
(介護4,000円加算)

※上記はあくまで目安・参考値です。実際の保険料は加入する保険者や料率によって異なります。介護保険料(40〜64歳)は2025年度の協会けんぽ料率1.60%(本人負担0.80%)で計算しています。

等級の境界線「1万円の差」が年間数万円の差になる

等級制度の特性上、報酬平均が等級の境界線をまたぐかどうかで、1年分の保険料が大きく変わることがあります。以下の2つのケースで見てみましょう。

【ケース①】月収34万円 vs 35万円の比較

月収 標準報酬月額(等級) 月額保険料(合計) 年間保険料(目安)
34万円 340,000円(第21等級) 48,076円 576,912円
35万円 360,000円(第22等級) 50,904円 610,848円
差額 約33,936円/年

月収の差はたった1万円なのに、保険料の年間差は約3.4万円。等級の境界線付近にいる方は特に意識してみてください。

【ケース②】4〜6月の残業代が等級を押し上げるケース

基本給30万円で、4〜6月だけ残業代が月5万円発生した場合、4〜6月の平均報酬は35万円になります。これは標準報酬月額360,000円(第22等級)に該当します。

一方、残業がなければ基本給30万円=標準報酬月額300,000円(第19等級)のまま。3等級分の差が生じた場合、月8,484円・年間約101,808円もの保険料差になる試算です(東京都・40歳未満目安)。

※上記はあくまで目安・参考値です。実際の保険料は加入する保険者や料率によって異なります。

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4〜6月に注意すべき報酬の種類と実務ポイント

このセクションでは、定時決定で「見落としがちだけど大事」な報酬の種類と実務上の注意点を整理します。

定時決定の算定に含まれる報酬は、基本給だけではありません。4〜6月に支払われる以下の項目はすべて算定対象になります。

  • 時間外労働・休日出勤・深夜手当(いわゆる残業代)
  • 通勤手当の変更・増額
  • 住宅手当・家族手当の新設・増額
  • 賞与の一部を月給に組み替えた場合の増額分

「4〜6月に残業を抑えた方が保険料を節約できる」という話を耳にすることもあるかもしれません。確かに、短期的に見ると保険料負担が下がる可能性はあります。ただし、厚生年金の将来の受給額は標準報酬月額の平均に連動するため、単純に「低い方が有利」とは言い切れません。労働法上の残業義務との兼ね合いもあるため、給与設計は総合的な判断が必要です。

等級表の範囲(2025年度)

2025年度の等級範囲は以下のとおりです。厚生年金と健康保険で等級数・上限額が異なる点は実務上よく混乱するポイントなので、確認しておきましょう。

保険種別 等級数 下限(第1等級) 上限(最高等級)
厚生年金 32等級 88,000円 650,000円(第32等級)
健康保険(協会けんぽ) 50等級 58,000円 1,390,000円(第50等級)

高収入の方は特に、厚生年金の上限(月収約635,000円以上で頭打ち)と健康保険の上限(月収約1,355,000円以上で頭打ち)が異なる点に注意が必要です。厚生労働省の2025年度資料でも、この2種類の等級表が別々に掲載されています。

まとめ:定時決定のポイントを3つで振り返る

最後に、この記事で押さえておきたいポイントを3つにまとめます。

  • ①4〜6月の報酬平均が9月〜翌年8月の1年分の保険料を決める:残業代・手当を含む報酬が対象になるため、この時期の給与は特に意識しておきたいポイントです。
  • ②等級の境界線付近では「1万円の差」が年間数万円の差になる:月収34万円と35万円の比較では年間約3.4万円、残業代が増えて3等級上昇するケースでは年間約10万円超の差になることも。
  • ③支払基礎日数17日ルールと除外ケースを理解しておく:病欠・休職月があっても3か月のうち1か月でも17日以上あれば算定対象になります。

「自分の標準報酬月額が正しく設定されているか確認したい」「4〜6月の給与水準が変わったときの影響を試算してみたい」という方は、ぜひ社保ジャッジのシミュレーションツール(https://tool.shaho-judge.com)を活用してみてください。

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本記事は情報提供を目的としており、税務・法律上のアドバイスではありません。正確な保険料は加入先の保険者または会社の担当部署にご確認ください。2025年度現在の情報をもとに執筆しています。

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