2025年度現在の情報をもとに執筆しています。
この記事でわかること
- 企業型DC(確定拠出年金)の掛金上限と税制メリットの仕組み
- iDeCoとの掛金上限・節税効果・社会保険料への影響の違い
- 月収別の具体的な節税シミュレーション(2025年度版)
企業型DC(確定拠出年金)とは?基本の仕組みをおさらい
このセクションでは、企業型DCの基本的な仕組みと税制上のメリットを確認します。
企業型DC(企業型確定拠出年金)は、会社が毎月掛金を拠出し、従業員が自分で運用先を選んで将来の年金を積み立てる制度です。「会社がお金を出してくれて、運用は自分で」というイメージですね。iDeCoが「自分でお金を出して自分で運用する」制度なのと比べると、出発点が違います。
税制面でのメリットは3つあります。まず、会社が支払う掛金は全額損金算入できるため、法人税が軽減されます。次に、従業員にとっては掛金が「給与」として課税されないため、所得税と住民税が自動的に下がります。そして、運用中の利益も非課税——通常の投資信託なら約20.315%の税金がかかる運用益が、まるごと手元に残ります。
受け取り時も優遇されており、一時金なら退職所得控除、年金形式なら公的年金等控除が適用されます。老後に向けてじっくり資産を育てながら、現役時代の税負担も減らせる、一石二鳥の制度といえますね。
掛金上限は「会社に他の年金制度があるか」で変わる
企業型DCの掛金上限は、会社に確定給付年金(DB)などの他の企業年金制度があるかどうかで決まります。
| 会社の年金制度の状況 | 企業型DC 月額上限 | 年額換算 |
|---|---|---|
| 企業型DCのみ(他制度なし) | 55,000円 | 66万円 |
| DB等を併用している場合 | 27,500円 | 33万円 |
自分の会社がどちらに当てはまるかは、人事部や総務部に確認してみてください。この上限内で掛金が設定されるのが基本ですが、後述するマッチング拠出でさらに上乗せできる場合もあります。
iDeCoとの違いを徹底比較|掛金・税制・社会保険料
このセクションでは、企業型DCとiDeCoをさまざまな角度で比較します。
2022年10月の法改正により、企業型DC加入者がiDeCoを併用しやすくなりました。以前は会社ごとの「規約変更」という手続きが必要でしたが、改正後は原則として企業型DC加入者全員が個人でiDeCoに申し込めるようになっています。選択肢が広がった分、それぞれの制度の特徴を正確に把握しておくことが大切です。
掛金上限の比較
| 加入状況 | iDeCo 月額上限 |
|---|---|
| 企業型DCのみ加入(他制度なし) | 20,000円 |
| 企業型DC+DB等に加入 | 12,000円 |
| 企業型DC未加入(自営業者等) | 68,000円 |
なお、マッチング拠出(従業員が事業主掛金に上乗せして拠出できる仕組み)を選択している場合は、iDeCoには加入できません。マッチング拠出かiDeCoか、どちらか一方の選択制です。どちらが有利かは、掛金の柔軟性や運用商品のラインナップによっても変わりますので、慎重に比較してみてください。
税制・社会保険料への影響の違い
| 比較項目 | 企業型DC(事業主掛金) | iDeCo(本人拠出) |
|---|---|---|
| 所得税・住民税の軽減 | ◎(給与課税されない) | ◎(小規模企業共済等掛金控除) |
| 法人税の軽減 | ◎(全額損金算入) | なし |
| 運用益の非課税 | ◎ | ◎ |
| 社会保険料(厚生年金・健保)の軽減 | なし※ | なし(会社員の場合) |
| 受取時の税制優遇 | 退職所得控除/公的年金等控除 | 退職所得控除/公的年金等控除 |
※企業型DCの事業主掛金は、健康保険法・厚生年金保険法上の「報酬」に含まれないため、標準報酬月額の算定対象外です。つまり掛金を増やしても社会保険料等級は変わりません。「社会保険料が下がる」効果はないものの、逆に言えば「掛金分だけ給与が増えたとしたら上がっていたかもしれない社会保険料の増加を回避できる」という副次効果はあります。
iDeCoも、会社員(厚生年金・健康保険加入者)の場合は社会保険料の軽減効果はありません。一方、国民健康保険に加入している自営業者は、iDeCoの所得控除を通じて国保料が下がる可能性があります(計算方式は自治体によって異なるため要確認)。
月収別シミュレーション|実際どのくらい節税できる?
このセクションでは、社保ジャッジで確認した数値をもとに、月収別の節税効果を具体的に試算します。
月収25万円|企業型DC(月55,000円)を活用した場合
月収25万円の場合、標準報酬月額は260,000円(第17等級)です。社会保険料は以下のとおりです。
| 保険の種類 | 計算式 | 月額負担 |
|---|---|---|
| 厚生年金 | 260,000円 × 9.15% | 23,790円 |
| 健康保険(東京・協会けんぽ) | 260,000円 × 4.99% | 12,974円 |
| 社会保険料合計 | — | 36,764円 |
企業型DC(月55,000円)の掛金は報酬に含まれないため、標準報酬月額・社会保険料は変わりません。ただし、年66万円分の課税所得が圧縮されます。所得税率10%・住民税10%の方なら、年間で約132,000円の所得税・住民税の軽減効果が見込めます(参考値)。
月収35万円|企業型DC+iDeCoをフル活用した場合
月収35万円の場合、標準報酬月額は360,000円(第22等級)です。
| 保険の種類 | 計算式 | 月額負担 |
|---|---|---|
| 厚生年金 | 360,000円 × 9.15% | 32,940円 |
| 健康保険(東京・協会けんぽ) | 360,000円 × 4.99% | 17,964円 |
| 社会保険料合計 | — | 50,904円 |
企業型DC(月55,000円)+iDeCo(月20,000円)を併用すると、年間で合計90万円の課税所得が圧縮されます。所得税率20%+住民税10%(実効税率30%)の方なら、年間で約270,000円・10年で累計約270万円の節税効果が見込めます(参考値・運用益非課税分は別途)。
月収50万円|DB併用で企業型DC+iDeCoを選択した場合
月収50万円・DB(確定給付年金)併用の場合、標準報酬月額は500,000円(第27等級)です。企業型DCの上限は月27,500円、iDeCoの上限は月12,000円となります。
両方をフル活用すると年間47.4万円の課税所得が圧縮され、実効税率30%なら年約142,200円の節税効果(参考値)。DB併用の方はマッチング拠出かiDeCoかの選択も含め、自社の制度設計をしっかり確認することをおすすめします。
※上記はあくまで目安・参考値です。実際の保険料は加入する保険者や料率によって異なります。
【PR】節税しながら将来の資産も増やしたい方へ。iDeCoや企業型DCと組み合わせて活用できる資産運用サービスをチェックしてみてください。
運用益非課税の効果|長期で見るとどのくらい違う?
このセクションでは、非課税運用がもたらす長期的な恩恵をイメージしやすくお伝えします。
企業型DCもiDeCoも、運用中に発生した利益(配当・値上がり益)は全額非課税です。通常の証券口座では利益に約20.315%の税金がかかりますが、DC・iDeCoではその分がそのまま再投資に回ります。
たとえば、毎月75,000円(企業型DC55,000円+iDeCo20,000円)を年率3%で20年間運用した場合、通常の課税口座と比べると運用益の非課税分だけで数十万〜100万円超の差が生まれるケースもあります(参考値)。長期運用になるほど「複利×非課税」の組み合わせが効いてきます。
また、受け取り時にも退職所得控除や公的年金等控除という大きな優遇があります。これも長い目で見た資産形成には見逃せないポイントです。現役時代の節税+運用益非課税+受取時優遇という三段階の恩恵が、企業型DCとiDeCoを組み合わせる最大の魅力といえるでしょう。
2022年法改正で変わったポイント|iDeCo併用の新ルール
このセクションでは、2022年の改正内容と、2025年度現在のルールを整理します。
2022年10月の改正により、企業型DC加入者がiDeCoを利用する際のハードルが大幅に下がりました。改正前は「労使合意による規約変更」という会社単位の手続きが必要でしたが、改正後は個人で申し込めるようになっています。「会社がiDeCoを認めてくれない」というケースが減ったのは、多くの会社員にとって朗報ですね。
2025年度も継続中のルール:マッチング拠出かiDeCoか選択制
ただし、一点だけ注意が必要です。マッチング拠出(従業員が会社の掛金に上乗せして拠出する仕組み)を選択している場合は、iDeCoには加入できません。2025年度現在もこのルールは継続しています。
どちらを選ぶべきかは、以下の観点で比較してみてください。
- マッチング拠出の場合:上乗せ分も社会保険料の算定対象外・運用商品は企業型DCのラインナップのみ
- iDeCoの場合:掛金上限内で自由に運用商品を選べる・手数料が別途かかる場合あり
運用商品の選択肢やコストを比べて、自分に合う方を選ぶのがポイントです。会社の人事担当や社労士に相談するのもよいでしょう。
まとめ|企業型DC×iDeCoで節税を最大化するための3つのポイント
この記事の要点を3点に絞って振り返ります。
- ①所得税・住民税の圧縮が主な節税効果:企業型DCもiDeCoも、会社員の場合は社会保険料(厚生年金・健康保険)の軽減効果はありません。節税の中心は所得税・住民税の軽減と運用益の非課税です。
- ②2022年改正でiDeCo併用が格段に使いやすく:企業型DC加入者でも個人でiDeCoに申し込めるようになりました。ただしマッチング拠出を選んでいる場合はiDeCoとの併用不可。自分の状況を確認してから判断しましょう。
- ③長期・複利・非課税の組み合わせが最大の武器:企業型DC(最大月55,000円)+iDeCo(最大月20,000円)を併用すると年90万円の課税所得を圧縮できます。さらに運用益非課税・受取時優遇まで含めると、長期的な資産形成に非常に有利な制度です。
自分の月収や会社の制度に合わせた節税効果をもっと詳しく知りたい方は、ぜひ社保ジャッジの試算ツールもご活用ください。→ 社保ジャッジ 試算ツール
【PR】企業型DCやiDeCoで積み立てた資産をさらに活かしたい方へ。資産運用の選択肢を広げるサービスはこちらから。
本記事は情報提供を目的としており、税務・法律上のアドバイスではありません。正確な保険料や掛金の取り扱いについては、加入先の保険者または会社の担当部署にご確認ください。

コメント